「サイリウム」はなかなか聞き慣れない栄養素ですね。
どこかで聞いたことがある人は、もしかしたらコンサートなどで使われるペンライトの「サイリウム」かもしれません。
ペンライトのサイリウムは英語でCyalumeと書きます。
食べ物のサイリウムはPsyliumと書き、日本語の音は同じですが、別の言葉です。
さて、サイリウムですが、便秘解消成分として有名です。
しかし、サイリウムの効果は便秘解消だけに留まらず、血液中の悪玉コレステロールを低下させる作用もあることが判ってきました。
サイリウムを安全に効果的にとる方法、適量などを栄養士が説明します。
サイリウムとはどんな食べ物?
サイリウムは、オオバコという植物の種皮のことです。サイリウムの90%は食物繊維で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が1:4の割合で含まれています。
水溶性食物繊維はジャムをプルプルさせる成分(ペクチン)や海藻に多く含まれ、不溶性食物繊維はごぼうやセロリなど、筋っぽい繊維の野菜に多く含まれています。
サイリウムは、水溶性、不溶性2つの食物繊維を持った食品であり、食物繊維のかたまりと言えます。
サイリウムの大きな特徴は、水に浸けると水を吸ってゼリー状になることです。
サイリウム大さじ1杯で、約450mlの水をゼリー状にする保水力が、便秘解消に役立つとして、昔からお腹の薬として使われてきました。
サイリウムの原料となるオオバコは「インドオオバコ」と言われる種類です。
オオバコの種類は世界に約200種類ほどあり、日本で道端に生えているオオバコは、日本古来のオオバコとセイヨウオオバコ、そしてその雑種がほとんどです。
インドオオバコも、食用としてそのまま食べることはありません。
サイリウムとして精製されたものを、そのゼリー状になる性質を利用して、料理やお菓子などで食べたり、みそ汁や飲み物に入れて摂ったりします。
サイリウムと悪玉コレステロールの関係
食事性コレステロールが腸で吸収されるには、胆汁酸が必要です。
サイリウムに含まれる水溶性食物繊維を摂ると、腸の中で胆汁酸が薄まりますので、サイリウムを食事と一緒に摂ると、食事性コレステロールが吸収される量が少なくなります。
さらに体は、「体内に胆汁酸が足りない!」と判断して、血液中のコレステロールから胆汁酸をいつもより多く作りだすので、血液中のコレステロールの消費が進み、悪玉コレステロールも減るのです。
水溶性食物繊維は、この2つの効果で悪玉コレステロールを下げます。(※食事性コレステロールとは、食品中にもともと含まれているコレステロールのことです。)
不溶性食物繊維は、食べ物をかさ増しするので、腸の中で食事性コレステロールが胆汁酸に触れないうちに腸を通過させてしまいます。
したがって、食事性コレステロールが腸で吸収される量が減るのです。
さらに、不溶性食物繊維は腸内に住む腸内細菌のエサになりますので、腸内細菌が活発になります。
活発になった腸内細菌は、短鎖脂肪酸という成分を作り出し、これが肝臓でコレステロールの合成を抑える働きをします。
サイリウムは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を持っていることから、これらの4つの働きすべてを使って、結果として悪玉コレステロールを下げる作用を示すのです。
サイリウムのおすすめの摂り方
サイリウムは、ゼリー状になる性質を利用し、お菓子や料理に使うと摂りやすいです。水を加えるとゼラチンや片栗粉と同じような状態になります。
サイリウムを摂る量は粉末で1日3~20g程度で、悪玉コレステロール値を低下させるという研究結果が出ていますので、目安にしましょう。
サイリウムは菓子材料や健康食品として、500gで2000~3000円程度で購入できます。
わらびもち
サイリウムを使ったおやつとしてわらびもちが代表的です。水に溶かしたサイリウムを鍋やレンジで加熱して、冷やし固めます。
柔らかいお餅のような食感から、硬めの団子のような硬さまで、水の量で変えられますので、好みの硬さで作ると良いですね。
1人分でサイリウムを3g程度使用します。
飲むゼリー
サイリウムのゆるいゼリー状になる特性を生かして、飲むゼリーも作れます。
お好みのジュース(白濁するのでカルピスや濃い色のジュースがおすすめ)に溶かしてから加熱して、冷やすだけです。
コーヒーで作ったサイリウムゼリーを砕いて、牛乳と混ぜると液体とゼリーの両方が飲める不思議なドリンクになりますよ。
1人分でサイリウム6g程度使用します。
サイリウムでとろみ付け
サイリウムを片栗粉として使う方法です。片栗粉よりも少量でとろみが付きますので、片栗粉をお肉などにまぶす使い方だと失敗します。
とろみを付けるあんかけや、タレにとろみを付けたり、とろみの付いた汁物などに向いています。
1人分でサイリウム3g程度使用します。
サイリウムの注意点
サイリウムは、摂り方に十分注意が必要です。
メリットばかりのようなサイリウムですが、サイリウムは悪玉コレステロールを減らすと同時に、善玉コレステロールも下げてしまいます。
また、高齢者ではサイリウムの効果が若い人より少なくなるという研究結果もあります。
1日3~20gという目安量を守るように気をつけて下さい。
ポイント1:十分な水分と共に摂る
サイリウムに、水分を吸ってゼリー状になる性質があるということは、サイリウムをそのまま口に入れて飲み込んだら、喉に張り付く可能性もあるということです。
粉末3g程度を250ml以上の水分に溶かし、一緒に摂ることが重要です。
ポイント2:薬と一緒の服用は避ける
薬を服用する場合には、サイリウムによって薬の効力が阻害される恐れがあるため、一緒に摂ることは避けます。
サイリウムを摂ってから、少なくとも1時間以上あけてから薬を服用するようにします。
ポイント3:腹痛や普段と違う体調の変化が出たら飲むのをやめて医師に相談
サイリウムを摂ると、腹痛や下痢、便秘などの副作用が出ることがあります。
ときに、頭痛や背中の痛み、鼻炎や咳などもみられることがあります。
このような症状が現れたり、サイリウムを摂ることに不安がある場合には、医師に相談するようにしましょう。
結論
サイリウムは、オオバコの種皮のことで、食物繊維の1種です。水に入れると水を抱き込んでゼリー状になる特性があります。
食物繊維は大きく2つに大別され、水溶性と不溶性に分けられます。
それぞれに2つの悪玉コレステロールを下げる効果があり、サイリウムは両方の食物繊維をもつので、合わせて4つの効果で悪玉コレステロールを下げます。
サイリウムは、ゼリーなどのお菓子や料理のとろみ付けに1日3~20g摂ります。
サイリウムをそのまま摂る際には、水分と一緒に摂るようにします。
また、薬を服用する場合には1時間程度おいてから服用して下さいね。
フリーランスの麻酔科医として複数の病院で勤務。生活習慣病アドバイザー、麻酔科標榜医、麻酔科認定医、日本麻酔科学会会員、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員。
医師として生活の質を上げ、楽しく健やかな毎日を過ごして頂くため「健康」に関する執筆も行っています。