アルコールは嗜好性の高い飲み物で、宴会の席には欠かせず、家庭での晩酌が習慣になっている人も少なくありません。
その中でもワインやウイスキーはアルコール度数が高く、少量をゆっくりと時間をかけて嗜む種類のお酒です。
「アルコールは飲み過ぎると肝臓に良くない」ということは広く知られていますが、血中のコレステロールへどのような影響があるのかというのはあまり知られていません。
それでは、ワインとウイスキーがコレステロールを含め、私たちの体にどのような影響を与えるのか、ということについて説明をしていきます。
ワイン・ウイスキーってどんな飲み物?
ワイン・ウイスキーは嗜好飲料に分類され、ワインはブドウの果汁を発酵させたお酒、ウイスキーは大麦やトウモロコシなどの穀物を酵素で糖化し、発酵、熟成をさせたお酒です。
ワイン1杯は120ml、ウイスキーは1杯30ml(シングル)が標準的な量です。ワインは通常ストレートで飲みますが、 ウイスキーはお湯や水、炭酸水で割るなど、色々なバリエーションがあります。
それぞれ平均的な1杯あたりの食品成分について以下にまとめました。
ワイン | ウイスキー | |
---|---|---|
標準的な1杯あたりの量 | 80 ml | 20 ml |
エネルギー | 58 kcal | 47 kcal |
ワイン | ウイスキー | |
---|---|---|
たんぱく質 | 0.2 g | 0 g |
脂質 | 0 g | 0 g |
炭水化物 | 1.2 g | 0 g |
ワイン | ウイスキー | |
---|---|---|
ナトリウム | 2 mg | 0 mg |
カリウム | 88 mg | 0 mg |
カルシウム | 6 mg | 0 mg |
マグネシウム | 7 mg | 0 mg |
リン | 10 mg | 0 mg |
鉄 | 0.3 mg | 0 mg |
亜鉛 | 0 mg | 0 mg |
銅 | 0.02 mg | 0 mg |
ワイン | ウイスキー | |
---|---|---|
ビタミンD | 0 μg | 0 μg |
ビタミンE | 0 mg | 0 mg |
ビタミンK | 0 μg | 0 μg |
ビタミンB1 | 0 mg | 0 mg |
ビタミンB2 | 0.01 mg | 0 mg |
ビタミンB6 | 0.02 mg | 0 mg |
ビタミンB12 | 0 μg | 0 μg |
葉酸 | 0 μg | 0 μg |
パントテン酸 | 0.06 mg | 0 mg |
ビタミンC | 0 mg | 0 mg |
ワインはブドウの果汁を原材料としているため、たんぱく質やミネラル、ビタミン類が含まれていますが、ウイスキーはカロリー以外の栄養素はほとんど含まれていません。
それぞれの特徴
ワイン
ワインは果実酒に分類され、赤・白・ロゼなど種類もさまざまです。色だけではなく、品種やブランドによって何種類にも分けられ、それぞれの違いを比べるのもワインの楽しみ方の一つです。
また、地中海地方の煮込み料理や肉や魚のソースなどにおいて、コクや旨味を引き出すための料理酒としても用いられています。
ウイスキー
ウイスキーは蒸留酒に分類されます。ウイスキーのアルコール度数は平均40〜60度と高く、ストレートで飲むと喉を突き刺すような痛みを感じることもあります。ウイスキーには糖質が含まれていないので、他のお酒よりもダイエットに向いているお酒であるということができるでしょう。
ワイン・ウイスキーとコレステロールの関係
コレステロールを上げる要因
どちらのお酒にも脂質は含まれていないので、コレステロールを直接摂取することはありません。アルコールのカロリーは1gあたり7kcalと高いのですが、ウイスキーのような蒸留酒の場合は、吸収されることなくすぐに熱として発散されてしまいます。
だからと言っていくら飲んでも太らないというわけではないので注意しましょう。
体内のアルコールが過剰になってしまうと、アルコールを上手に分解することができなくなり、脂肪酸の合成を高めるため、肝細胞内の中性脂肪を増加させてしまいます。
このメカニズムによって血中のLDLコレステロールも増加するという仕組みになっています。
コレステロールを下げる要因
アルコールの摂りすぎはコレステロールを上昇させる要因となりますが、ワインやウイスキーの飲み方次第では、血中のコレステロールを下げてくれるという嬉しい効果があります。
これは、両方に含まれているポリフェノールの働きによるもので、ワインはぶどう由来のポリフェノールが、ウイスキーはあまり知られていませんがエラグ酸というポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールには抗酸化作用があり、ガンや老化を防止する効果があります。さらに、血中のコレステロールを減らし、血液をサラサラにしてくれるため、動脈硬化予防にも効果的です。
動脈硬化を予防することによって、心疾患や脳血管疾患の発生を抑えることができるので、結果的には生活習慣病全体の予防に役立っているといえます。
コレステロールが高い人に適したワイン・ウイスキーの摂り方
ワインやウイスキーの飲み過ぎは、コレステロールを上昇させてしまいますが、適量の摂取を心掛けられれば、コレステロールの低下を期待することができます。
1日の目安量はどのくらい?
厚生労働省の示す、節度ある適度な飲酒は、純アルコールで1日平均20グラムとされています。これはワインなら180ml(ボトル1/4)、ウイスキーなら60ml(ダブル1杯)に値します。カロリーに換算すると、それぞれ130kcal、141kcalと、150kcal程度に抑えることができ、カロリーの指標にも当てはまります。
オススメの飲み方
コレステロールが高い人でも、飲み過ぎさえしなければワインやウイスキーを楽しむことは可能です。適量の摂取を心掛けることで、コレステロールの減少が見られるかもしれません。
飲み過ぎないためには、空腹状態を避ける、水やお茶などのアルコールの入っていないものも飲みながら、食事を楽しみながら飲むなど、色々と工夫をしてみましょう。ウイスキーは水やお湯で割ったり、ロックで氷を溶かしながらゆっくりと飲むのも良いでしょう。
結論
ワインやウイスキーの飲み過ぎは、コレステロール上昇の原因となりますが、適量を心掛ければ、ポリフェノールの作用によるコレステロール減少効果を期待することができます。
ポリフェノールはコレステロールを減少させるだけではなく、ガンや老化を予防したり、さまざまな生活習慣病の予防にも効果的です。ワインやウイスキーを上手にとりいれながら、日々の健康管理に役立てましょう。
フリーランスの麻酔科医として複数の病院で勤務。生活習慣病アドバイザー、麻酔科標榜医、麻酔科認定医、日本麻酔科学会会員、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員。
医師として生活の質を上げ、楽しく健やかな毎日を過ごして頂くため「健康」に関する執筆も行っています。