私たちの身近な食品の一つである「卵」ですが、コレステロールが多く含まれているというイメージが強く、摂取する量に気をつけている人も多くいるようです。
しかし、卵はコレステロールを上げる食品であるというのは本当なのでしょうか?
卵に含まれる栄養素や、コレステロールの含有量、食べるときに気をつけるポイントなどについて説明していきます。
卵ってどんな食べ物?
食用の卵として流通しているものはほとんどが鶏卵です。
鶏卵は主要な栄養素のほとんどを含有しており、しかも簡単に安く手にいれることができる貴重な食材です。
特に重要なたんぱく質源として重宝され、他の食品たんぱく質の栄養価の基準にもされています。日本の鶏卵の消費量は、1人あたり年間300個近くに達していて世界のトップクラスです。
卵は調理もしやすく、単品でも食べることができるため、料理のバリエーションも多くあります。ゆで卵や目玉焼き・厚焼き卵・炒り卵など、サッと火を通せばできる料理が多いので、特に忙しい朝のおかずとして食べられることが多いでしょう。
それでは、鶏卵(1個分=60g)の栄養価についてみていきましょう。
1. エネルギー量・水分・主要栄養素
エネルギー | 91 kcal |
水分 | 45.7 g |
たんぱく質 | 7.4 g |
脂質 | 6.2 g |
炭水化物 | 0.2 g |
2. ミネラル類
ナトリウム | 84 mg |
カリウム | 78 mg |
カルシウム | 31 mg |
マグネシウム | 7 mg |
リン | 108 mg |
鉄 | 1.1 mg |
亜鉛 | 0.8 mg |
銅 | 0.05 mg |
3. ビタミン類
βカロテン当量 | 10 μg |
ビタミンA | 90 μgRAE |
ビタミンD | 1.1 μg |
ビタミンE | 0.6 mg |
ビタミンK | 8 μg |
ビタミンB1 | 0.04 mg |
ビタミンB2 | 0.26 mg |
ナイアシン | 0.1 mg |
ビタミンB6 | 0.05 mg |
ビタミンB12 | 0.5 μg |
葉酸 | 26 μg |
パントテン酸 | 0.87 mg |
ビタミンC | 0 mg |
ビタミンCを除けば、ほとんどの栄養素が含まれており、栄養面からみてもとても優秀な食材だといえます。
コレステロールが高い人も卵を食べても大丈夫?
コレステロールは細胞膜の主成分で、脳神経の刺激を伝える組織や脂肪の消化の働きがある胆汁の成分でもあり、生命の維持には欠かせません。
コレステロールは主にLDLコレステロールとHDLコレステロールに分けられ血中に存在しています。
LDLコレステロールが増えすぎると血管が傷つき、そこにプラークが生じ血管が狭く、硬くなってしまいます。この症状を動脈硬化と呼び、虚血性心疾患や脳血管障害の原因となります。
卵はコレステロールを上げる食材?
卵1個に含まれているコレステロールの量は252mgであり、以前はコレステロールの高い食品として卵の摂取には気を付けるべきだと言われていました。
しかし、厚生労働省による「2015年度版 日本人の食事摂取基準」の改訂により、コレステロールの摂取量の上限量は設けないという方針に変わり、卵だけではなく食品全般からのコレステロールの摂取量に関しては心配しなくても良いということになりました。
今までコレステロールを気にして、卵や魚卵などの摂取に気を付けていた人にとっては、突然気にしなくてもいいよ、といわれるとどうして良いのか戸惑ってしまいますよね。
それでは、どうして食品からのコレステロールの摂取制限は必要なくなったのか説明します。
体内に存在しているコレステロールは、その8割が体内で合成されます。残りの2割が食品に含まれるコレステロールからの摂取となるのですが、摂りすぎた場合でも合成を調整する機能が働くため、体内のコレステロール量はある程度一定に保つことができるのです。
このように、食品からのコレステロールの摂取によって血中のコレステロールが上がることは滅多にないということと、摂りすぎた場合にも調整機能が働くという理由から、卵を含めた食品からのコレステロールの摂取に気をつける必要はないということが研究により証明されました。
健康的な卵のとり方
卵は重要なたんぱく質源であり、幅広い栄養素の摂取が期待できる食材です。
コレステロールの摂取については心配する必要はなくなったものの、だからといって摂りすぎては栄養素の偏りが生じてしまい、健康を害するリスクがあります。
成人の1食あたりのたんぱく質の摂取目安量は約20~30gの範囲内で、1日を通しても100g以下には抑えるのがベストです。
たんぱく質は筋肉や血液のもととなり、ホルモンの原料や色々な酵素の原料ともなります。
体を構成する重要な栄養素とはいっても、過剰摂取は肥満に繋がり、生活習慣病の原因となってしまいます。肉や魚など、他にたんぱく質が含まれている食品はないか、バランスを見ながら量を調整していきましょう。
コレステロールを下げる効果のある栄養素
コレステロールが気になる人は、次のような食材を摂取することで、血中コレステロールを低下させる効果を期待できます。普段から食事にとり入れることで、コレステロール上昇のリスクを減らすことができますよ。
1. EPA・DHA
青魚に含まれるEPAやDHAはLDLコレステロールを減らし、HDLを増やし、中性脂肪の減少効果も期待できます。
サンマ・アジ・イワシなどの背中の青い魚を積極的にとり入れましょう。
2. 食物繊維
野菜に多く含まれる食物繊維にはコレステロールが体内に吸収されるのを抑える働きがあります。コレステロールの中でも特に水溶性食物繊維が効果的で、多く含まれている野菜は、菜の花やオクラ、ごぼう、キャベツ、サツマイモなどが挙げられます。
3. タウリン
タウリンはアサリ、ホタテ、カツオなどの魚介類に多く含まれています。タウリンをしっかり摂取することで、肝臓の働きが良くなり、コレステロールが原料となっている胆汁酸の排泄がスムーズになります。
結論
以上、卵の栄養価やコレステロールの含有量について説明をしました。
卵は私たちにはとても身近であり、食べる機会がとても多い食品です。
卵はビタミンC以外の栄養素がほとんど含まれているという栄養素の宝庫でもあります。以前はコレステロールを上げる代表的な食品とされていましたが、現在では食品に含まれるコレステロールの摂取は血中コレステロールに影響しないということが証明されています。
しかし、だからといって卵を食べ過ぎてしまうと、たんぱく質の摂りすぎや栄養バランスの偏りが生じ、何らかの健康障害が生じるリスクがあります。肉や魚などの、他にたんぱく質が含まれる食品とのバランスを意識しながら過剰摂取に気をつけることが大切です。
また、コレステロールが気になる人には、コレステロールを下げる効果のある食品を多く摂り入れることをオススメします。青魚に含まれるEPA・DHA、野菜に含まれる食物繊維、イカやアサリなどに含まれるタウリンなどを積極的に食事にとり入れていきましょう。
フリーランスの麻酔科医として複数の病院で勤務。生活習慣病アドバイザー、麻酔科標榜医、麻酔科認定医、日本麻酔科学会会員、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員。
医師として生活の質を上げ、楽しく健やかな毎日を過ごして頂くため「健康」に関する執筆も行っています。